以下は山翠舎代表山上浩明(著)『”捨てるもの”からビジネスをつくる』より、田中正之社長と代表山上との対談を一部抜粋しております。
山上:お店の特徴をお話いただいてもいいですか?
田中社長(以下敬称略):カフェウインズダイモンは、山翠舎が手掛けているコワーキングスペース「FEAT.space大門(以下フィートスペース大門)」と同じ建物に入っています。
店内には何本もの古木が使われているのですが、なかでも最も目立つのは、10メートル以上もある梁でしょう。
インスタ映えするので、この梁をバックに写真を撮る来店は少なくありません。
なお、この店は長野市としては珍しく、朝8時からオープンしています。生ハムや自家製野菜のラペなどがワンプレートで楽しめるモーニングサラダプレートに、おかわりができる自家製パン・バゲット、さらにスープ、1ドリンクがセットになったモーニングは、味も量も満足度が高くて評判です。
山上:お店を開くことになった経緯を覚えていらっしゃいますか?
田中:カフェウインズダイモンがある場所では以前、卸売業を営んでいた会社の倉庫でした。
そこが長らく空いていたのです。一方、(同時出店した)信州門前ベーカリー蔵が入っている土蔵は電気も水道も通じていない状態で、物置として使われていたそうです。
そして、2つの物件を使って店を出しませんかと山上さんに提案された。確か、そのようなスタートでしたよね。
山上:そうです。ぜひ田中さんに出店をお願いしたいと思って何度もアプローチさせていただきました。
ただ、そのたびに断られ、そのときのショックは今でも忘れられないですよ(笑)
でも、ある日、確か夜中でしたか、突然、田中さんからお電話がかかってきて
「ひらめいた!パン物販店と飲食店(カフェ)のセットで行ける!もう一回、話を聞かせてくれ!」
と言っていただいたときは、とてもうれしかったのを覚えています。
田中:東翔は40年ほど前から長野市・長野駅周辺15店舗ほどの飲食店を開いてきました。
そのほとんどが料理とアルコール飲料を提供する業態だったのですが、コロナ禍の影響などもあって、アルコール以外の店もやってみたいと考えていたのです。
そこで、カフェウインズダイモンで焼き立てのパンをつくってモーニングやランチとして提供し、同時に、信州門前ベーカリー蔵で焼きたてパンを販売するプランを考えました。
古木が演出する「時が止まった空間」
山上:カフェウインズダイモンでは、古木を使わず普通の内外装にしてお店を出すこともできたと思います。
それなのに、あえて古木などを使った店にしたのはなぜですか?
田中:やはり、古木に魅力を感じていたからでしょうね。
山上:田中さんにとって、古木の魅力とはなんですか?
田中:まずは、落ち着ける雰囲気を醸し出すところですね。
古木が近くにあるだけでなんとなく穏やかな気持ちになれるのです。そしてもう一つは、再生を感じさせる点。
古木は古いだけでなく、新たな息吹が吹き込まれ新たに生まれ変わるというイメージがあり、そこに魅力を感じます。
そう言えば、今の若い人たちは古木を見て「カワイイ」と言うんですよ。
金属やプラスチック製のモノに囲まれて育った世代は、古木に対して「古いのに新しい違和感・不思議感」を覚えているのかもしれません。
懐かしいのに新鮮という感じ方が、カワイイという言葉に込められているのでしょう。
山上:古いモノなのに新しいというのは、2つのお店に共通した点ですね。
田中:そうなのです。単に古い木材だけでつくった店だと、民芸調というか、別物になってしまいます。
そうではなく、古いものと新しいものをハイブリッドにするという山翠舎の提案が良かったですね。
山上:カフェウインズダイモンと信州門前ベーカリー蔵の仕上がりについては、満足していますか?
田中:十分満足しています。オープン当時でも完成度は高かったと思いますが、山翠舎が、できあがった店を見てさらに改良を施してくれたのです。そういうフォローの手厚さが、信頼につながっています。