昭和の佇まいを残す店々を左右に、都電荒川線がゆっくりと走り抜けていく。そんな東京の下町に、2018年の2月、「旬膳燗 はせ川」がオープンしました。和食料理人の長谷川翔さんと、奥さんでバーテンダーの麗さんが営む小さなお店です。

 
純米酒の燗酒をちびりちびりと飲みながら、旬の食材を使った和食料理を楽しんだり、はたまた夜更けの2軒目選びで、洋酒のバーとして利用したり。夫婦2人、それぞれの個性を活かしたお店づくりに、個店ならではの良さが綺麗に映し出されています。

 
オープンから2年半が過ぎた2020年の10月、お店を訪ね、長谷川さんご夫婦にお話を伺ってきました。

 
(2020年10月27日 取材)


 


そうですね。

 


2018年の2月5日です。

 


知り合いの飲食店で、内装を山翠舎さんでやっているところが何軒かあって。「ろっかん」っていう荒木町のお店とか、「煮込みや まる。」さん、ですかね。

 


そのときにろっかんの福田さんに紹介してもらって、

 


そうですね、はい。木材を多く使っていて、いいなあと思って、「どこでやってるんですか?」ってダイレクトに福田さんに訊いて教えてもらいましたね。

 


細かい点まで僕らの要望通りにやってもらえたので、すごい良かったですね。

 


この壁は、もともと僕の付き合いのある酒屋さんが、酒蔵さんからもらった木桶の板で作ったもので。

その木桶の板をぜんぶ分解して、山翠舎さんに「これをどうにか使ってもらうことはできますか?」という感じでお願いして作ってもらったんです。

 


いや、まったく(笑)。

僕は「これをなんか上手いこと使って作ってください」っていうのをお願いしただけです。

これはほんと、お客さんも見てびっくりされますね。

 


そうですね。

この辺は下町で、大衆的で賑やかなお店が多いので、少し落ち着いたイメージのお店の入り口にしました。

 


僕は生まれがこの辺なので。

 


はい。西尾久の生まれなので。

 


僕が尊敬する人の料理屋さんから一文字ずつ取って。

「旬の味 みなと」、「季膳 いかわ」、「食と燗 くら川」ですけど、それぞれ一文字づつですね。

 


100%ではないですけど、なるべく関わりがある生産者さんからとってますね。

前の会社にいたときから取引してる業者さんもたくさんありますけど、まあ、このお店を始めてからも、いろいろ紹介してもらったりとか。そういうのがどんどん増えればいいなあと思ってやってます。

 


特にうちはカウンターがメインのお店なので、やっぱりお客さんに料理を提供するときに食材にストーリーがあったほうがお客さんも喜んでくれる、それが大きいですね。

あと、実際に食べてみたり飲んでみたりすると、ぜんぜん美味しいんですよね。

自分が好きなものをお客さんに勧めたいなあ、っていうのはありますね。

 


自分の地元にオープンしたのでこの辺のお客さんが当然ターゲットになってるんですけど、当初想定していた以上に、それ以外にも他のお店さんの紹介とか、それこそ日本酒での繋がりとか、いろんなところから来てくださるお客さんが多くて、ありがたいですね。

 
長谷川麗さん(以下、麗)

はい。

 


うちの大きなテーマは、和食と日本酒の燗酒を合わせることなので、「わたしは出しゃばっちゃいけないな」って当初は思ってたんです。

だけど、意外と「和食を食べたいんだけど日本酒が体質的に受け付けない」っていうお客さんだったり、「今日は日本酒はいらない」っていうケースがあったりで。

そんな人でも選べる要素がいろいろあるのはいいことかな、って思うようになりました。

 


というより、どちらかというと食後に少しカクテルを飲んだりとか。そういうのがうちは多いかなあ。



わざわざ食事の時に洋酒のハードリカーを合わせたりとかっていうのはうちはやらないですね。



和食に合わせてっていうよりは、この辺はあんまりバーもないので、逆に食事メインじゃなくて、バー利用みたいなのもしてもらえたらいいなあと思ってて。

 


やっぱりその、使ってる食材ぜんぶとはいかないですけど、なるべく繋がりのあるものをこれからも仕入れたい、それをお客様に提供していきたいっていうことが一つ。

あと、1軒目として利用いただく場合がほとんどなんですけど、この辺はバーとか夜遅くまでやってるお店ってそんなに多くないので、ふらっと2軒目みたいな感じで、ゆっくり1、2杯飲んでもらえるようなお店にもなっていきたいなって思いますね。