東京、西荻窪駅から徒歩3分。駅近の落ち着いた通りの一角に、2025年の4月、「中国菜 MIX」がオープンしました。
店主の水田真司さんは、中華料理人一筋のキャリアを歩んできた方。あらゆる中華を知るプロフェッショナルで、店はオープン早々、繁盛店に。この水田さん、料理もさることながら、ちょっとした内装なら自分でこなし、自分ならではの空間に変えてしまう、まさに「作る人」。今日までのキャリア、店作りへの思いなど、お話を伺ってきました。
(2025年7月1日 取材)
— 「中国菜 MIX」は、どんな特徴を持った中華料理屋さんですか?
29歳の時から「中国茶房8(エイト)」っていうところで22年間働いたんですけど、そこで100人ぐらいの中国人たち、もう、入れ替わり立ち替わりですけど、一緒に働く機会があって。中国全土から来たコックさんがいっぱい在籍しているお店だったんですね。
そのエイトに勤める前までは、ホテルで中華料理をやってたんです。最初がパレスホテル東京で、上海料理。次に浅草ビューホテルで広東料理。で、29歳でその「中国茶房8」っていうところに行って、そこで東北料理から四川、広東、福建と、まあ、中国全土の料理をやったんです。それでもう、料理の幅がバッと一気に広がったんです。
なので、中国全土のいろんな料理をお出しするという意味で「中国菜 MIX」。そこが特徴ですかね。
— 中華料理一本のキャリアで来られてるんですね。
そうですね。

— 中華の世界に入ったのは何歳の時でしたか?
高校2年の時に、ちょっと友達の紹介で中華料理店でバイトしたのが最初です。
それで、そこの親方からパルスホテルを紹介いただいて。
— 中華料理店でバイトしたのは、もともと料理に興味があったからですか? それとも、たまたまそういう口があったからですか?
うちの兄貴も中華のコックで、そういうのもちょっとあるかもしれないですけど、まあ、たまたま紹介していただいたからですね。
— それで、高校卒業したらもう、その世界に。
そうです。
あと、うちの妻は台湾人なので、台湾の友達やお義母さんに「こういう料理があるよ」とか、いろいろ教えてもらったりして。
だからまあもう本当、中国全体の料理をミックスでやってるんです。あと看板(のデザイン)になっている猫が、
— 猫?
うちは猫を2匹飼ってるんですけど、2匹とも雑種、ミックス猫なので。
— ああ、なるほど。
— 出されている料理は、本格中華。
本格中華プラス、中国の家庭料理ですね。
— しかし中国料理って一言でいうけれど、もう、
全然違います。
— 中国の中に、各国の料理がいろいろある、みたいな感じですよね。
上海の人は上海料理しか認めない。北京の人は北京料理。他の地方の料理を食べないんですよね。
— 水田さんが思う中国料理の魅力っていうと?
中国料理が作れると、洋食でもパスタでも何でも応用が効くところですかね。例えば香辛料の使い方とか。
— 頭でシミュレーションできるってことですね?
そうです。中華はバラエティ豊かなので、いろいろ応用できるんです。香辛料だけでも全然違いますからね。
— ずっと中華一筋で修行されてきて、今回が初めての自分の店?
そうですね。はい。
— 独立はずっと考えられていたんですか?
結果的にエイトでは22年間も働きましたけど、最終的には独立しようと考えていましたね。
その会社では、お店の内装とかも全部やらせてもらえたりして。新規立ち上げの店とかで、自分はプロじゃないですけど、もう本当に自分で内装施工もできるぐらいで。
— それは、会社の中ではどういう立場になるわけですか?
料理顧問プラス、新規開拓部の部長だったんです。
だからこのお店の内装も、山翠舎さんにお願いしたわけですけど、結構いろいろこだわって、自分でやってるところもあるんです。
5年ほど前に、那須でホテルやお店の立ち上げをやったんですけど、その時、那須で見たコーヒー屋さんが綺麗で可愛くて、こういう壁飾りとかにその要素を入れてるんです。
— いいですね。愛着のある空間になっているのが、こうして見ても伝わってきます。
山翠舎に内装を頼まれたのは、どういった理由で?
店舗デザイン.comで山翠舎さんの事例を見て、古木を使いたいと思ったんです。知り合いの施工会社もいくつかあるんですけど、「古木を使いたいから、ごめんなさい」って言って。
あと、たまに行ってた「天天厨房」さんも山翠舎にやってもらったって聞いて、やっぱりいいなと。
— 古木のどういうところに惹かれたんですか?
ちょっと温かみにあるお店にしたかったので。
— ちなみに、本場式の中国のお店って池袋にいっぱいありますけど、古木を使うような感覚とは違いますよね?
中国はそうですね。ギンギラギンですね。
ただ、前の会社(中国茶房8)の社長は中国人っていっても残留孤児だった方で、半分日本人なんです。内装にも古木に近い、結構センスのある方だったので、池袋の中華とはぜんぜん違う感じで。
— こうしてお店が完成して、一番気に入っている場所はどこですか?
いや、全部気に入ってますよ。お客さんもみんな「本当にいいお店だね」って言ってくれますし。「すごく落ち着く」って。
— このテーブルは?
これは自分が那須で買ってきたんですよ。
— 存在感ありますね。
こっちは山翠舎さんが古木で作ってくれたテーブル。
あとはそうですね、こういう古木の柱とかは本当にかっこよくて、気に入ってますね。
— ちょっと話を戻すのですが、高校卒業して料理人になって、一度も他の道にブレることなくずっと中華料理をやってきたっていうのは、この世界が楽しかったということですか?
そうですね。中華、面白いですね。
— 人生の仕事、天職だと感じられているわけですね。
まあ、そうですよね。
— 一方で料理だけじゃなくて、会社員時代に店の管理や内装まで任されたっていうのは、よほどの力量だなと思うのですが。
まあ、今は自分でやろうと思えば、YouTubeとか見て、なんでもできちゃう時代なので。これ(タイル張りの柱)も自分で貼ったりしてるんですけど。
前の社長が何でも自分たちでやろうっていう人だったんです。1から10まで、時間さえあれば、全部自分たちでやる。物件探しも契約も、内装工事も本当に自分たちでやってましたね。名古屋のお店なんか施工業者を入れずに、全部自分たちでやったんですよ。那須では温泉まで作りましたからね。
それにやっぱり、最終的には独立して自分のお店をやりたいわけだから、自分である程度できるようにしておいて、損はないじゃないですか。
— ちなみにオープンしたのが、
(2025年)4月18日です。
— どんな感じでしょうか?
まだ2ヶ月しか経ってないんですけど、もうずっと忙しくて。
— 最初からお客さんが入ったわけですか?
そうですね。
多分インスタに載っけてくれた人がいて、それでもう、どんどん拡散していって。おかげさまで。
ランチなんて全然入らないかなと思ってたら、並ぶぐらいで。
— すごいですね。
夜もちょっと入りすぎるくらい。
— 今後はどう展開していきたいですか?
従業員もちょっと増やして、もっと料理を良くして。
今は私一人のワンオペなんで、やりたい料理もそんなにできていない状態なので。

— 最後に。「中国菜 MIX」へ来たらぜひこれを食べてください、というメニューを教えてください。
そうですね。まず水餃子ですかね。本当の中国の家庭料理。前の社長の直伝で。
私自身いろんなところの水餃子を食べてきましたけど、今うちで出してる水餃子は、本当に美味しいと思います。注文が入ってから皮を伸ばして作るので。
あとは担々麺かな。
— 話を伺っているだけで食べたくなりました。
今日はありがとうございました。