東京 西葛西にある総合レクリエーション公園。園内には、江戸川区によるリニューアル事業により、2025年1月、フードエリアが誕生しました。
「Deli & Vino Maru-shu Santé」も、同エリアに出店した飲食店の一つ。オーナーの山本誠さんは、門前仲町で同じく「Maru-shu」の屋号を掲げたワインバルを2店舗経営しています。つまり今回の出店が3店舗目。山本さんは、今回の出店はこれまでの2店舗とは違う「新しい一つの挑戦」なのだといいます。その違いは、何か?
オープンから5ヶ月が過ぎた2025年6月、お店を訪ね、初出店から今日までの流れ、これからのビジョンなどについて、山本さんにお話を伺ってきました。
(2025年6月17日 取材)
— 今回のお店はどういったコンセプトになりますか?
門前仲町のお店(葡萄屋 Maru-shu)はイタリアンベースのワインバルという形でやっているんですけど、そこそこ調子がいいんですね。それで今回、(江戸川区による公園リニューアル事業で)商業施設をつくるにあたって、僕らにも「出店しませんか?」ってお声がけをいただき、それで新しいお店をやることになったんです。
西葛西は「住みやすい街」としてよく取り上げられるエリアなので、今回は、ワインをメインにしつつも、ここに暮らす人たちが普段使いできるような、ちょっとカジュアルなお店にしようと思いまして。ビストロ感覚のワインバー。まあ「そういうお店が近くにあったらいいな」っていうお声はずっといただいてたんです。門前仲町のお店はイタリアンが中心ですけど、今回はフレンチビストロ寄りにしてます。

— 今回のお店が3店舗目ですが、3店舗とも山翠舎が手掛けているわけですね?
そうです。
— 1店舗目の「葡萄屋 Maru-shu」のオープンは何年前ですか?
2011年なので、14年前です。
— 最初から、イタリアのワインバルみたいなイメージで始められたわけですか?
僕自身はもともとイタリアンの料理人だったというわけじゃないんです。ただ、それ関係の職場が多かったんです。なので、僕の持ってる知識のなかでは、イタリアンという形がやりやすかったんです。
もちろん料理もやってましたけど、どちらかというとサービス側。なので一店舗目に関しては、ほんと、手探りで始めましたね。
それから5年ほど経ったころ、同じ門前仲町にいい物件情報が出て、もう一店舗やることになったんです。次の店舗を出すかどうかは、自分が出したいっていう想い以上に、実際は物件との巡り合わせなんですよね。店をやってると「こんな物件があるけどどう?」っていう話が、なんとなくやってくるんです。それで2店舗目を、もっとカジュアルな立ち飲みのワインバル(立ち呑み wine Maru-shu 2)として出したんです。

ーそして今回、同じ東西線の沿線、荒川を挟んでの西葛西で、3店舗目の出店と。
こうして着実に展開されてきた山本さんですが、最初はどんなきっかけで飲食業界に入られたのですか?
きっかけと言うほどでもないんですけど、お酒が好きだったんです。最初、22、3歳ぐらいの時、飲食とは関係ない業種に就職したんですけど、結局肌に合わなくて、2ヶ月ぐらいで辞めちゃったんです。当時好きでよく通っているバーがあって、次第にお酒の知識を学びたいなって思うようになって、そこから銀座のバーだったり、いろんな飲食店に通うようになったんです。
なので、もちろん料理もそうなんですけど、いつか独立したいなと思うなかで、どっちかというと僕のフィールドはお酒だなと。イタリアンをやりながら、お酒について学んでいったんです。ソムリエの勉強をしたりとか。そういう流れですね。
— お酒が好きっていうのは、お酒の味にハマったんですか? それともお酒を飲む空間や時間みたいのものに惹かれていったんですか?
お酒の味も好きでしたけど、やっぱり空間が好きだったんですね。あと、従業員さんが楽しそうにやってる姿はキラキラして見えましたし。ただまあ、実際この世界に入ったら入ったで、なかなかハードな仕事なわけです。ただ、そういうなかでも、自分の肌には合ってたんです。
なので、最初はお酒からこの世界にガッと入りこんでいって、そこから徐々に料理の方にもシフトしていった流れです。

— 一店舗目を2011年に立ち上げ、今回3店舗まで展開してきたわけですけど、うまく軌道に乗せ広げていったポイントはどんなところにあったのでしょうか?
うまくいってるのかは正直まだ疑問なんですけど、一般的に2店舗目まではなんとかなるんですよ。2店舗なら一人でなんとか見ることができるので。なので、3店舗目が最初のハードルだとは言われるんですね。でも、やっぱり3店舗目は出したい。ただそれを軌道に乗せるには、人材の確保も含めて大変な部分があるんです。実際、うちも人が足りなくて、いろんなツテを使って繋いでいるところなんです。
ただ、うちの場合、一度入ってくれたスタッフは長く勤めてくれる子が多いんです。なので、ここまでやってこれたことの何がポイントだったかっていうと、そういうことなのかもしれないですね。
たださっきも言ったように、今回の3店舗目っていうのは、とうとう自分の目が届かなくなる領域に入ったわけなので、一つの挑戦なんですよ。

— その3店舗とも山翠舎が内装を手がけたわけですが、一店舗目を山翠舎に依頼したきっかけと、結局、それが3店舗とも依頼することになったのは、どんな理由からですか?
店舗デザイン.COMっていうサイトで、施工事例を見たのが最初でした。それを見たときに、山翠舎さんの事例は温もりがあっていいなあと思ったんです。それで会社に直接電話して、お会いし、お話しをさせてもらったんです。
それで一店舗目を施工してもらったんですけど、完成後のアフターフォローもしっかりしてくれて、それで信頼関係ができたっていうのが大きかったと思います。
他の業者さんにも、相見積もりとデザインを少しお願いしたんですけど、山翠舎さんの方がアグレッシブに提案してくれたのも、僕のフィーリングに合ったんですね。
それで2店舗目も3店舗目もお願いするかたちになりました。
— 今回のお店づくりは、どんなところにこだわりましたか?
今回は公園内にあるお店なので、ナチュラルになりすぎないようにしようと。例えば、白やベージュのようなナチュラルに寄りすぎるあまり、カフェっぽくなってしまわないように。あくまでワイン、酒場っていうイメージにしたいので、色も少し強めのものを入れてもらったんです。

— この壁の青色がそうですね?
そうです。
— この店に来たら、こういう風に楽しんでほしい。そんなおすすめの楽しみ方はありますか?
今厨房に入ってくれているシェフが、ビストロ料理がすごく上手い。なので、ぜひその料理をメインに、ワインとのペアリングを楽しんで欲しいです。ワインと料理をカジュアルに楽しめる大人のお店として使ってもらえたらと。
— オープンして5ヶ月が経ちましたが、どんな状況でしょうか?
公園の整備が遅れているのもあって、まだ商業施設としてこの公園が機能してないんです。実際ここに人が流れてくるような現状ではなくて、今のところ、各店舗にそれぞれのお客さんが来てる状況です。
それでもようやく5月ぐらいから、少しずつ予約で埋まるようになってきました。「やってることは間違ってないんだな」という実感はありますね。

— これからどういう展開を図っていきたいですか? 夢やビジョンはありますか?
まずは3店舗、その一つ一つのお店でちゃんと利益を出し、それぞれがちゃんと回ること。これが目下の課題ですかね。そして会社としては、こういう人にはしっかりとこういう対価を出す。スタッフに対してのお給料面だったり、働く環境だったり、そのあたりをしっかり充実させていくこと。その上でスタッフの士気を上げられるような取り組みができれば、次、4店舗目いきましょう、5店舗目いきましょう、っていうタイミングがやってくると思ってます。
僕は、一つ一つが独立しているような、個人店のような店舗をいっぱいやりたいんです。
今のところワインバルだったり、イタリアンだったり、フレンチ系ビストロだったりとやっているわけですけど、和食系でもいいですし。どの店も独立して個性があって、でも「同じ系列なんだ!?」って思われるような展開をしたいなと。
— そうなるとやはり人、個性のある店を立ち上げられるような人ですね?
そうです。ただ、なかなか難しいところもありますが。それだけでは成り立たないよっていう部分もあるので。
— ある程度、その人がやりたい方向性で個人店を立ち上げる。でも一方で、店舗数が増えていくと、トップとして何がしかの管理をしていかなきゃいけない、と。
まあ、そうなんです。その匙加減が難しいわけです。ただ挑戦していかないと衰退していく。現状維持はダメなので、それが課題であり目標ですかね。
— 今日はありがとうございました。
